治療と仕事

    2026.08.04

    2026年4月施行「治療と仕事の両立支援」努力義務化の完全ガイド

    この記事は、社員の健康課題に直面している中小企業の経営者や人事担当者の皆様に向けて執筆しています。2026年4月から始まる新しい制度の具体的な中身と、それが会社にもたらす価値について、法令のポイントを押さえながら詳しく解説します。

    制度の具体的な内容と対象範囲について

    2026年4月1日から始まる努力義務の義務化

    改正労働施策総合推進法に基づき、2026年(令和8年)4月1日より、職場における治療と仕事の両立支援がすべての企業において努力義務化されます 。これまでは法的根拠のないガイドラインに基づき取り組むことが促されてきましたが、今後は法律に基づき、厚生労働大臣が策定する「治療と就業の両立支援指針」に沿った適切な措置を講じることが、事業主の責務として明確に規定されます 。

    対象となる企業と労働者の範囲

    今回の法改正において、企業の規模による除外規定はありません 。従業員を1名でも雇用している事業主であれば、すべての企業が対象となります 。また、対象となる労働者についても、正社員だけでなくパートやアルバイトなど、雇用形態に関わらずすべての労働者が含まれます 。これまで対策が遅れがちだった中小企業においても、組織の大小を問わず、適切な体制整備が求められることになります 。

    企業が整備すべき具体的な事項

    事業主が講ずべき措置として、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置が求められます 。具体的には、事業者による基本方針の表明と周知、研修等を通じた社員の意識啓発、相談窓口の明確化が挙げられます 。また、時間単位の有給休暇、病気休暇、時差出勤、テレワーク、短時間勤務など、柔軟な働き方を支える休暇制度や勤務制度の整備も重要です 。

    個別支援の進め方

    実際の支援は、労働者からの申し出によって始まります 。企業は、主治医や産業医等の意見を踏まえ、具体的な両立支援策を検討します 。これには、避けるべき作業の特定や時間外労働の可否といった「就業上の措置」だけでなく、通院時間の確保などの「治療への配慮」も含まれます 。

    制度導入の背景と現状の課題

    健康リスクを抱える労働者の実態

    背景には、働く世代の健康リスクの高まりがあります 。一般定期健康診断において、脳や心臓疾患につながるリスクのある有所見率は年々増加しており、2023年(令和5年)には58.9パーセントに達しています 。また、何らかの疾患で通院しながら働く人は就業者全体の約40.6パーセントにのぼっており、3人に1人以上が治療を抱えながら業務に従事しているのが現状です 。

    治療開始前の離職という深刻な損失

    特に注目すべき課題は、病気を理由に退職した人のうち25.3パーセントが、最初の治療が開始される前の段階で会社を辞めてしまっているという実態です 。これは、「会社に迷惑をかけたくない」という思い込みや、支援体制が不明確であることへの不安が原因と考えられます。企業にとっては、長年培ってきた経験やスキルを持つ人材を、本格的な治療が始まる前に失ってしまうという極めて大きな損失です 。

    制度に取り組むことで得られる価値

    貴重な人材の定着と組織の活性化

    両立支援に取り組む最大の価値は、大切な人材を失わずに済むことです 。労働者が希望する場合に、病状を悪化させることなく仕事を続けられる環境を整えることで、離職を防止し、人材の定着につながります 。また、会社が社員を大切にする姿勢を明確に示すことで、労働者のモチベーションやエンゲージメントが向上し、結果として組織全体の生産性向上や事業の活性化が期待できます 。

    企業の社会的責任と採用ブランディング

    この取り組みは、「健康経営」や社会的責任(CSR)を果たすことそのものです 。多様な人材がそれぞれの健康状態に応じて活躍できる職場は、対外的にも魅力的に映り、採用力の強化に大きく寄与します 。特に人手不足が深刻な中小企業にとって、「誰かが病気になっても支え合える体制」は、競合他社との差別化を図る強力な経営戦略となります 。

    外部リソースを活用した負担軽減のヒント

    自社だけで体制を整えるのが難しい場合は、公的な支援機能を積極的に活用しましょう。全国47都道府県に設置されている産業保健総合支援センター(産保センター)では、専門家が無料で制度導入の相談や社員向けセミナー、個別の調整支援を行っています 。また、医療機関と企業の情報を橋渡しする「両立支援コーディネーター」という専門職の養成も進んでおり、専門知識を補完しながら対応することが可能です 。


    今回の努力義務化を、単なる法的な要請への対応と捉えるのではなく、社員との信頼関係を強固にし、変化に強い組織を作るための投資として活用してみてください。まずは厚生労働省のポータルサイト「治療と仕事の両立支援ナビ」などで公開されている様式例を確認することから始めることをお勧めします 。

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